
このお店の印象をどのように書いたらよいものか迷う。
店主の経歴はユニークで、かつては冨ヶ谷のパン屋「ルヴァン」で店長を務めていたそうだ。「ルヴァン」と言えば、創業時より自家製天然酵母・国産小麦を使い、多くのパン好きを虜にして来たお店だ。
「あさひ」の店主中島氏は、「ルヴァン」入店と同時に今をときめく永福町の「黒森庵」で蕎麦打ちのアシスタントを務めていたという。
ご自身が菜食を実践されていることもあって、蕎麦と野菜をテーマにしたお店を持つことが念願の夢であったらしい。
小田急小田原線東北沢駅北口から井の頭通り方向に歩いて5分ほど。古い商店街の通りに面して、白い暖簾が風に揺れていました。
最近雑誌の蕎麦特集に掲載されたばかり。しかも週末とあって混み合うことを予想して訪問しましたが、昼の営業が終わる間際だったせいか、先客一組のみで入れました。
店内は民芸風というか、アフリカ風のインテリア。軽いリズムの洋楽がBGMに流れています。もっと「和」のイメージを想像していたので意外。カウンターとテーブル席合わせて10席足らずというこじんまりとした造り。調理から接客までご主人一人で切り盛りしている。
先客が会計となり、「幸せです〜」と言って店を後にされました。
食べて幸せになれる料理。
素敵じゃないですか。


ひたちのビールと、通常は2人前というご自慢の「野菜いろいろ」を少なめの量で。
野菜は無農薬かとお尋ねしたら、国内で無農薬の野菜を栽培することは難しく、仕入れるとなるとコストや鮮度の問題もあるので、極力有機野菜で新鮮なもののこだわっているとのこと。
出された野菜は生ではなく、軽く炙ったり油で揚げられていたりして、余分な水分を飛ばして甘味を引き出しています。噛むと生命力を感じます。
豆腐には擦りおろしではなく粉末の生姜が掛けられています。香りはしっかりとします。
この豆腐も吟味されたもののようで、甘味が強い。浜納豆や昆布と椎茸の煮物なども盛られている。
お酒を日本酒に切り替えて、もりそばを注文。動物性の食材を避けて、つゆには鰹節を使っていないことを知り合いから聞いていました。
つゆを少し口に含んでみると、確かに鰹節の味や香りはしません。ほのかに甘味があり、味醂をつかっているのかと思いきや、味醂も砂糖も不使用とのこと。椎茸と昆布だけ。まるで精進料理です。



蕎麦は予想以上の細切り。シャープなエッジ感があり、端正で凛とした美しさがあります。この日は大根はたっぷりの辛味大根と晒し葱。わさびは仕入れの都合でいつもよりグレードの高い物だそうで、非常にピりっとした辛味が強い。おだやかなつゆにたっぷりの大根おろしを入れていただくと、おろしそばのような感じになります。
主役の蕎麦を種々の野菜や薬味が引き立てます。
只でさえ淡白なイメージが強い蕎麦。メニューには天麩羅さえ無く、唯一動物性の素材を使った料理が玉子焼き。今流行りのマクロビオテックな料理を出すお店として、一定の支持を受けることでしょう。
ごく一般的な蕎麦好きの一人としては、精進料理同様、「健康」という宗教的ものを肌で感じます。
万人向けとは言い難いところです。客を選ぶお店かもしれません。

「あさひ」
東京都世田谷区北沢4-32-26
tel.03-3485-7785
12:00〜15:00、18:00〜22:00
(営業時間は前後する場合あり)
火曜、第3月曜
*全席禁煙
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