
11月が来るのを、私は首を長くして待っていました。このお店では冬場にしか出さない「鴨」が解禁になるからです。私は鴨が大好きです。これまで口にした鴨は数知れず。
されど蕎麦屋において、ここを凌ぐ鴨を他に知りません。


まずはお酒を冷やで。菊正宗の樽酒。ぷ〜んと木の香りが漂います。
そして「鴨ぬき」。鴨南蛮の蕎麦抜きです。熱々の鴨ぬきと冷や酒。これが私を天国の境地に誘う魔法です。

分厚い抱き身、脂身、そしてつくねと白葱のハーモニー。私にとっては世界一の鴨料理です。

つくねは、鴨の手羽元の硬い肉に脂身、同量の鶏肉を混ぜて包丁で叩き、団子状にまとめたもの。辛汁と出汁で下煮しているそうです。


ざる蕎麦と、陶器製の土瓶のような湯桶。食の喜び。
いささか雑然とした前世紀的な雰囲気のお店ではありますが、気配りの利いたサービス振りにはいつもながら頭が下がります。
今日も客席を見下ろすように「若」が。成長振りが頼もしい。将来が嘱望されます。
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